讃岐鉄器職人 槇塚 登さん
鉄と火、職人が三位一体で生み出す。
「鉄は熱いうちに打て」のことわざのとおり、炉の中で赤く熱せられた鉄板に木槌を振り下ろし、素早く正確に形を整えていく讃岐鉄器職人・槇塚登さん。「何年もやっていますが、集中しないとできない作業です。すごく大変なんですが、これによって作品に魂を込めることができます」出来上がった鉄のフライパンの表面には木槌で打った跡が残り、なんともいえない味わいがあります。
鉄のフライパンを作るようになってから、自分でも使ってみようと、以前は全くしなかった料理をするようになったという槇塚さん。
「鉄のフライパンを使うと、家庭でも中華料理店のように、焦げが香ばしい仕上がりの炒め物ができます。お好み焼きやぎょうざを焼いてもすごくおいしいですし、鉄ならではの良さを感じました」
少しだけ手間がかかる。それが愛着へと変わる。
『讃岐鉄器』という名前は、鍛冶産業の途絶えた讃岐の地に、再び古代の製法による鉄の仕事を広めたいとの想いを込めて槇塚さんが名付けたそうです。「個人の小さな発信ですが、讃岐の文化に何か少しでも貢献できればという気持ちがあります」
最後に槇塚さんにとって『暮らしを慈しむ』とは?と伺ってみました。「鉄のフライパンは毎回最後に油を塗って手入れをしなければいけません。少し面倒ですが、それが道具への愛着となり、料理をするのも楽しくなって、暮らしを慈しむことにつながるのではないでしょうか。そして親から子へ、子から孫へと、慈しまれながら鉄のフライパンを受け継いでもらえたら嬉しいですね」
讃岐鉄器職人 槇塚 登さん
香川県立高松工芸高等学校 電気科卒業。映像関係の仕事を経て、父が経営する(有)槙塚鉄工所に入所。家具や調理器具、アート作品など、従来の鉄工所の枠を超えた活躍で注目されている。